大正15年に発行されたレシピ本『手軽に出来るお惣菜の拵へ方』(東京割烹講習所 編)に、オシャレな名前の飲み物が載っています。
その名も「月の雫」
どんな飲み物なのかまったく想像できない…
でも、なんだか文学作品に出てくるような幻想的な名前でステキ。
ということで、「月の雫」を作って飲んでみました。
清涼飲料「月の雫」の作り方
東京割烹講習所 編『手軽に出来るお惣菜の拵へ方』天玄堂、1926年
左側のページに「月の雫」とありますね。
ちなみに今回参考にした大正時代のレシピ本『手軽に出来るお惣菜の拵へ方』は、国立国会図書館デジタルコレクションにて無料で閲覧できます。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/919000/122
材料
材料
引用元:東京割烹講習所 編『手軽に出来るお惣菜の拵へ方』天玄堂、1926年、215ページ
罐詰苺、ジャム大匙一杯、水二合、砂糖大匙一杯
缶詰の苺とジャムと書かれていますが、作り方を見る限りいちごジャムのことだと思われます。
水2合は約360mi。
ジャムと砂糖は大さじ1杯とありますが、計量スプーンが作られたのは戦後。
大正時代の大匙が何グラムなのかわからなかったので、気にせずに現在の計量スプーンの大さじ1として作りました。
材料の時点でなんとなく味は想像できますね。
いちごジャムと砂糖水。甘そう。
作り方
お鍋に苺ジャム大匙一杯と水二合、砂糖大匙山一杯加へて火にかけ煮ます。一煮立たせましたら裏漉して冷たく冷やします。次に冷たくなりましたらコツプに程よく盛り、これに堅く茹でた玉子の輪切を浮かして進めます。
引用元:東京割烹講習所 編『手軽に出来るお惣菜の拵へ方』天玄堂、1926年、215ページ
茹でた玉子の輪切…だと…?
突然の茹で玉子の登場で心がザワつきましたが、とりあえずレシピ通りに作ってみます。
「月の雫」をレシピ通りに作ってみた
材料はこんな感じ。
いちごジャムと水と砂糖をお鍋で煮ます。
ひと煮立ち。
濾しました。きれいな色ですね。これを冷蔵庫で冷やします。
・・・
はい、冷たくなりました。
さっそく茹で玉子を浮かべてみます。
あっ
なんとなくそうじゃないかと思ってたけど…沈みますね、茹で玉子。
お箸で玉子を掴んでそーっと浮かべようとしたけどこれが限界でした。
ポロポロ崩れた玉子の黄身が浮いていて、飲み物としてはちょっとイヤ。
映えとは正反対の飲み物ができあがりました。
「月の雫」はどんな味?
見た目はうすいローズヒップティーのような、きれいなピンク色。
では、いただきます!
サントリー天然水やいろはすのフレーバーウォーターのような、ほんのり甘いいちご味の水です。
ジュースほど甘くないのでゴクゴク飲めます。これはこれでおいしいかも。
そして気になる茹で玉子ですが、黄身がいちご味の水分を吸って少し甘くなってました。
茹で玉子はないほうがいいです絶対。
「月の雫」って結局なんなの?
私が聞きたい。
「月の雫」についてネットで調べてみましたが、出てくるのは全然関係ない山梨のぶどうのお菓子かレジン液ばかり。
当時の清涼飲料といえばサイダーやラムネなどの炭酸飲料がほとんどだったようなので、炭酸が入っていない甘い飲み物のレシピが珍しかったのは確かだと思います。
ただ、参考にしたレシピ本にも特に説明がなく、創作レシピなのかどんなときに飲むのか、何もわかりませんでした。
とは言え、昔のレシピを参考に作って味わうだけで歴史を体感できるので、歴史に興味を持つきっかけ作りにちょうどいいと思いました。
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